目の前で星が散った。 なじみの味が広がる。 脇腹が開いたのがわかった。 衝撃に備える。 まともに打たれる前に自ら後ろに飛ぶ。 殺せなかった痛撃に息が止まる。 が、そのまま接触している拳から伸びている腕にふれる。 どこでもいい。 そのまま力の方向に体をひねりながらバルドルの体を投げる… 「!」 砂 投げられたのは私だった。 バルドルは打った拳が完璧に決まらないことを見越していたのか服をつかみ、そのまま拳を引き足を払い、私を投げた。 「…な…んてむちゃくちゃな…」 体の下は小石混じりのグラウンド。 コンクリートで無かっただけましだった。 むちゃくちゃな投げ方…というより持ち上げられ、地面にたたきつけられたという方が正しいだろう。 即座に転がることもできない。 なじみの生臭い味と、なかなか慣れないざらりとした砂の感触が混ざり合い「負け」そのものの味がした。 追撃を食らえば確実に死ぬな、と思ったがさすがにバルドルも組み手でそこまでする気はない様だ。 「、意識はあるな」 クランツが寄ってきた。 「…おまえよくあんな投げ方ができたな。」 あきれ半分感嘆半分といった風情でバルドルの"投げることができた身体能力と判断力"を褒める。 さらに、私の全身を軽く検分し 「あれでこれだけの怪我か…」 「…まー骨は折れてないと思うよ…」 「話せるとは思わなかった」 「すぐには動けないよ」 逆光でクランツの表情はよく見えない。 まぁ見えたところでいつもの変わらない表情だろうが… 「あぁ、ありがと」 沈黙が奴の困惑と焦りを伝える。 投げられた直前に聞こえたのはクランツの声だった。 意図は伝わったようだ。 実際、あの声が無ければ少なくとも私は話すことは出来なかったろう。 ゆっくり、体を起こす。 バルドルと目が合った。 大丈夫だとうなずく。 大丈夫だ。 体は動く。 これぐらいで脱落するわけにはいかない。 「クランツ」 言うやいなや拳を放つ。 体重の乗り切らないそれは難なく防がれた。 「まだまだだな」 クランツの唇に薄い笑みが浮かぶ。 にやりと私も笑う。 大丈夫。 「バルドル。次は私が勝つからね」 ただ、地面に叩きつけられて砂が口の中でざらざらする話が書きたかったんです…orz |