背中をさする体温に泣かされる ただ安心してうずくまっていたい時 穏やかな場所 暖かな胸にただしがみつきたい じっとそこにただそこに 手に入らないと知る 風も鳴く夜 コインを投げて道を決めよう 海を隔てた人に電話を 手に入らないと知る 風も鳴く夜 また、同じ風が吹く………… 半ば壊れたラジオから流れていたのは甘いアルト。 空を見上げるも都会の空に星は少なく、もたれたボンネットはひんやりと冷たい 。 周囲は割れたガラスが散乱し、鼻孔を刺激するのは硝煙と血の臭い。 ギャング共の血も、巻き込まれただけの人の血も、等しく臭う。 自分の血も。 流されるべき血であるのは百も承知。 犠牲を払わなければ、結果は得られない。 血を流したく無ければ、それなりの訓練をすることだろう。 つまるところは…… 「私もまだまだってことかな」 感傷的になった自分を自嘲気味に笑ってレイチェルは迎えに来た男を振り返った。 足下に薄いピンクの渦が巻く。 ボディソープの香りの底にうっすらと血の臭い。 普段は血と汗を落としたらひとまず湯船に浸かるのだが…… レイチェルは頭を洗われていた。 洗っているのではない。 洗われていた。 先ほどの仕事でガラスを浴びたのだが、どうしたって自分で自分の頭を見ることは出来ない。 おさるの親子よろしくガラスを取られた後は風呂に直行。 当然、素っ裸。 ガラスを取ってもらえたら後はいいと言うのに、バロールは聞く耳を持たなかった。 今更ほほを赤らめる様な純情は持ち合わせていないが、ドジをして受けた傷を見られることが嫌だった。 たとえ擦り傷であってもそうなのだから、ガラスですっぱり切った傷などは言うに及ばずだ。 しかし。 大きな手が心地よく、たまにはこんなのも悪くはないとレイチェルは思った。 なんというか、ただラジオから流れる歌とお風呂が書きたくてデスね…… おさるの親子的な二人も結構好きです。 |