その瞳から迸る、力。



溢れんばかりの確固たる意志。

『敵』を排除する。


存分に体重の乗った肘が顔面めがけて飛んできた。
がっしとは受け止める。
びりびりと肩まで衝撃が響く。
関節をそのまま捻ろうとするも、膝が下から飛んできたため距離を取る。


うなじが泡立つ。


快感に。


血が沸き立つ。


興奮に。



鮮やかな弧を描いて獣の速度でバルドルの足がうなった。

ゆらり、との体が振れたに見える。

と、その瞬間。


火薬の破裂音にも似た音を立ての体が真っ直ぐにバルドルの懐に飛び込
んだ。


驚愕の表情が浮かぶより速く、の拳がバルドルの腹筋にめり込んだ。

そのまま軸足を内から掬い関節を固めた。






刻まれる時







仏頂面のバルドル。

あの流れで負けたことが悔しかったらしい。
だが私はいつも道りの風を装いながらも心中穏やかではなかった。

私は奴から迸る力に触発されて更に力が引き出される気がした。

この感覚は今までにもいやと言うほど覚えがある感覚。

違うのは、「一撃で沈められなかった」こと。
あの「感覚」でバルドルの腹に一撃は確かに入った。
しかし。
同時に「だめだ」とも思った。


。昼食の時間だ。・・・バルドルいつまでそうしている?」

クランツが横に立ち促す。

バルドルがこちらに来る。

そうか。

私は未だ表情に幼さの残るバルドルと最近とみに怜悧さを増したクランツと向かい合い、笑った。



「ぁあん?てめーなにわらってんだよ。」
「…悔しかったら勝てばいいだろう。」


体格の差は体重の差。

純粋に私の拳に威力が無かったのだ。


体格の差は性別の差。


刻まれる時は私と二人を別の生き物だと明確に示していく。



だがしかし。





「いっしょに、行こうか…」


怪訝そうな表情の二人。




私は大股で先に進んだ。



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