ジパングの風習






「豆まき?なんだそれ。」
バルドルはサンドバックを蹴りながら聞き返した。
「豆をまくんじゃない?種をまくのは種まきだよ。」
柔軟体操をしながら
「ジパングの風習だそうだ。図書館で見つけた。」
クランツは片腕立て伏せをしながら答えた。


「一種の厄払いだな。鬼は外に福は内に入れるらしい。」
勢いをつけ、一度上半身を浮かせ腕を入れ替えながら補足する。

「…豆ってグリーンピースでいいのかな。枝豆…そら豆はなんかでかいよね。」
ピタリ、と足先を後頭部につけが訊く。

「…豆の記述は無かったな。ただ、今日らしい。そして…」
「なんだよ。」
「鬼役が必要だ。」
「豆を投げるのにか?鬼は外っつーことは追い出されるのか?」
「そうだ。投げつけられるらしい。」
「ほーぅ」
にやりとバルドルが笑った。

「言い出したのはお前だろう?」
盛大にグリーンピース(事前に食堂からクランツが失敬してきた。)をバルドルに投げながらクランツが楽しげに言う。
袋に手を突っ込み、ガシッと落花生(事前に食堂からクランツが以下略)を掴みながらも笑顔で言う。
「鬼はーそとぉー。そーらバル〜」
「てめっクランツ!!豆を事前に用意しといて言うセリフか!!くそってめーも覚えてろっ!!」
茹でていない生グリーンピースに落花生。
二人は手首のスナップどころか振りかぶって思いっきり投げている。



これは、痛い。



。豆の袋がまだ向こうにあるからな」
うっすらと薄い唇に笑みを浮かべるクランツ。
は投げつけられた豆をあつめ、反撃を試み始めたバルドルを見やり頷いた。


確かに、豆がまだ必要だった。


「どうしたバルドル。避けないのか?…。ありがとう。」
「…てめぇ………………オラァァ!!!」

避けずに豆を集めるバルドルに確実に当てていくクランツ。
そのクランツに弾を補給する
完璧に頭に血が登ったバルドル。


騒ぎに気づいた教官に罰則を言い渡されるまで、もうしばらく続きそうである。
















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