「」
呼ぶ声はいつもの声。
この数ヶ月で、そうなった。
ばらばらだった私たちは、この施設に来てから三人共に上り詰め、下がり、また上る。
「」
あぁ。
呼ぶ主は朱の髪。
振り返らなくとも、隣にはいつもの石膏像に似た顔があるはずだ。
いつだったか社会科見学に連れて行ってもらった美術館の白い彫像に似ている。
そういうと、朱の髪は自分は何に似ているかと聞いてきた。
特に何も私は思いつかなかった。
写真でしかみたことの無い四つ足の獣はこの少年に本当に相応しいかどうかわからなかったからだ。
いっそ平凡な穏やかとも言えるこの生活。
毎日毎日訓練。
その中で確実に削られて補充される訓練生。
そう。変わらない。平和の為の礎になるため。
私はここに。
変えない為。
「!」
あぁ。
だんだん声が熱気をはらんできた。
そろそろ真面目に返事をしようか。
私は立ち上がり、緩みかけた口元を引き締め表情に仮面をかける。
「なにかな?」
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